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K 様邸 新築工事にあたって

この家は戸建免震住宅です。滑り材は鉄板に特殊フッ素加工した物を使用しています。地震の時に室内の物が倒れる震度4.5~5 以上の力が加わると、基礎と土台の間にある滑り鉄板が滑り始め、揺れを吸収する仕組みになっています。ゆっくりとした揺れには対応していなくて、強い地震になればなる程、免震効果を発揮します。50年間のメンテナンスフリー設計です。普段は目にする事のない部分ですが、安心して暮らしていただくための大切な仕組みです。



建物にはなるべく軽くて丈夫な国産の杉材を使用しています。柱や梁を見せています。節も含めて木目を楽しんでもらいます。木目はその木が育ってきた40~50 年の 過程を表わしていますので、思いを馳せて下さい。同じ木目は二つとありません。節も木が生きてきた証です。そんな自然の表情を楽しみながら暮らしてもらえたら嬉しいです。

1階空間は広いですが、極力直射日光は入れずに、窓の明るさと、わずかな木漏れ日の様な日差しが2 階の窓から格子の間を通って差し込んできます。その光は冬だけリビングやキッチンの奥まで柔らかな日差しとなり、吹き抜け天井を通って届きます。季節によって光の入り方が変わり、何気ない日常の中でも季節の移ろいを感じられると思います。

2階南面には大きな窓を全面に配置しました。窓掃除をする時の手摺を兼ねて、吹き寄せ縦格子を設けてあります。強風の時は飛散物対策になります。

その面に必要な耐力壁はステンレス丸棒を使った筋交いに変えて、すっきりとした窓になりました。安全性だけでなく、見た目の軽やかさにも気を配りました。

2階廊下には落下防止手摺を杉材で取り付けました。縦格子は見付け側に柾目が見える様に選んでいるため、より柔らかい感じで仕上がりました。こうした小さな工夫も、家全体の雰囲気をつくる大切な部分です。

吹き抜け部分の2階には天井が無く、冬に屋根裏に集まる暖かい空気を1階まで一気に降ろす様にファンを設置しました。
広い空間でも暖かさを無駄にしないための工夫です。



階段はささら桁2本で支えるオープン階段としました。両側の壁は2階床梁からの下り壁として、光も風も通り抜けられる様にしました。階段も単に上り下りするだけの場所ではなく、家の中に広がりを感じさせる空間になっています。

外部北側の露出した排水パイプは、地震時に白い板と干渉します。白い板は割れやすく作ってあるので交換となります。

縦樋も直には排水管に繋げません。切り離して水落ちとします。免震住宅では建物が動く事を前提に、こうした細かな部分にも工夫が必要になります。

家屋に隣接してキャット・ランを作りました。難しいのは動く地面と家との接続でした。玄関外階段の手摺も同様で、工夫が必要です。

免震建物は地震時に土地と家が最大25cm程ずれる事を表示して、事故を防がなければなりません。普段の使いやすさと、いざという時の安全性、その両方を考える事が大切です。

この家の断熱等級(1~7級まであって7等級が最高)は6で設計されています。外気温に左右されにくく、保温性能が高い住宅です。冷暖房費の節約・化石燃料の節約・安定した住環境・温室効果ガスの削減・室内の温度差を減らす事によるヒートショック等の健康被害の予防につながります。夏も冬も、家の中で気持ち良く過ごしていただきたいという思いがあります。

屋根材は和瓦で、1枚ごとに固定されている「防災瓦」を使用しています。和瓦は素材としては100年以上の耐久性を持ち、万一飛来物によって割れても部分修理が可能です。

外壁は通気工法の軽量モルタル塗りで、15~20年ごとに塗装すれば50年以上の耐用年数が期待されます。

サッシ枠はアルミと樹脂の複合材で、ガラスは複層ガラスで中間にガスが充填してありますが、20~30年ぐらいで徐々に抜けてしまうので、その時期にはガラスを入れ替える必要があります。

基礎コンクリートは「JIS」で決められていますが、20年ごとのメンテナンスを続ければ60年~100年と言われています。
ガス給湯器は8~10年、電気製品は10年~20年、外壁に使われている断熱材は50年~60年です。



以上の事を踏まえて、今後の計画を立てる必要があります。家は建てた時が完成ではありますが、そこから長いお付き合いが始まります。少しずつ手を入れながら、長く使い続けていく事が大切です。

住宅建設素材に完全な物はありません。「これを使えば絶対大丈夫」なんて無いです。住み続ける人が「大切」を思う心が、家を100年・200年と続く秘訣です。住む人の環境や生活が変われば家も変わるのがあたりまえです。

それぞれの進化や退化を予測しつつ対応して行く事が大切と考えます。家も人と同じ様に年を重ねていきます。その時々の暮らしに合わせて手を加え、住む人と一緒に育っていく家であってほしいと思います。

今回、この家を建てるにあたって「木造在来石場建て工法」を採用しながら、最新の「免震工法」(建築工法)も取り入れ、大工さん達が知恵を絞って完成しました。

昔から受け継がれてきた技術と、新しい技術。それぞれの良さを生かしながら、一つ一つ考えて形にした家です。これから先、何十年と暮らしていく中で、木の色も変わり、家族の暮らし方も変わっていくでしょう。そんな変化も楽しみながら、末永く大切に住んでいただけたら、造り手としてこれほど嬉しい事はありません。

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